ティボー・リジェ・ベレール 来日セミナーレポート その2

      2016/04/28

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ムーラン・ナ・ヴァンでの栽培の経緯

2008年、私がムーラン・ナ・ヴァンで栽培を始めたとき、
「コート・ド・ニュイにグランクリュを持つ人間が
なぜこんなところでブドウを育てるのか?」と多くの人々に言われました。

確かにニュイ・サン・ジョルジュで素晴らしい畑を持っておりますが、
他のテロワールや畑にも興味を持つべきだと私は思います。

ムーラン・ナ・ヴァンは大変興味深い土壌です。

ニュイ・サン・ジョルジュから南へ1時間ほどいった
ボジョレーの北側にあり、モノセパージュ(ガメイ)で育てられる畑です。

2008年当時、ムーラン・ナ・ヴァンについて私は多くを語っておりませんでしたが
この地に興味を持ったきっかけのひとつに、20世紀初頭のワインの価格があります。

実はムーラン・ナ・ヴァンのワインはヴォーヌ・ロマネの
ワインの価格と同じか、それ以上の価格がついていました。

P1190786上は1911年ヴィンテージの価格表です。

ヴォーヌ・ロマネ レアは常に良い価格が付くと思われていますが、
ムーラン・ナ・ヴァンやトランと同じ価格がついていることが分かります。

では、偉大なワインと同価格帯であったボジョレーが、
平凡なワインになり下がった理由は一体どこにあるのでしょうか?

それは1930年代に遡ります。

1929年の世界恐慌後、ブルゴーニュやボジョレーのワインは
全く売れなくなり、そういった状況下、
ブルゴーニュとボジョレーの対応策は180度異なりました。

ブルゴーニュでは1936年にアペラシオンを作りました。
まずモレ・サン・ドニを、続いてプルミエクリュやグランクリュを設定しました。

しかし、ヒエラルキーを作ったブルゴーニュとは反対に
ボジョレーではアペラシオンをボジョレーのみにし、
マセラシオン・カルボニックを取り入れ、6か月間の熟成で
すぐ現金化できるような早飲みワインを造る方向性へとシフトしてしまったのです。

ムーラン・ナ・ヴァンのテロワール

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ムーラン・ナ・ヴァンはボジョレーの最も北部に位置しており、
ガメイ自体、ピノノワールに非常によく似た特徴を持っています。

土壌ベースは花崗岩になりますが、シルト質も交じり花崗岩といっても多様です。
更に標高が変われば特徴も変わりますし、土壌自体の質もまったく異なります。

ですので、
ムーラン・ナ・ヴァンのワインを造る際、ひとつのキュヴェだけを造るのではなく、
ブルゴーニュと同じようにクリマごとに分けてワインを作ろうと思いました。

クリマの特徴をしっかりと理解することによって
異なる個性を引き出したワインを造ることができると考えたからです。

P1190787上の写真を見ると、標高の違う畑が並んでいるのがわかると思います。

一番低い手前の畑がLes Rouchauxになります。
中間の畑がVieilles Vignesになりまして、こちらに行くとより土壌が浅くなります。
(※建物はティボー氏のドメーヌ)
そして、更に丘の方にいきますと、ピンク色の花崗岩が増えていきます。

Bourgogne Les Deux Terres 2013

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私はムーラン・ナ・ヴァンで3つのワインのコンサルタントをしておりまして
どれも伝統的なワインの造り方をしているのですが、
そこで採れるブドウの質が大変よく、
その一部をブルゴーニュとブレンドしてはどうかと考えました。

そうして出来たワインが、Bourgogne Les Deux Terres、
ガメイとピノノワールをブレンドしたワインになります。

このLes Deux Terresというワインを作る前は
普通のブルゴーニュ・ルージュ(ピノノワール100%)を作っていましたが、
実際のところあまり満足はしていませんでした。

私は皆が造る、同じようなワインを目指しているわけではないので、
オート・コート・ド・ニュイのピノノワール
ボジョレーのクリュのガメイをブレンドしました。
(※クリュ=サンタムール、ムーラン・ナ・ヴァン、シェナ)

このワインのアイデアは
ガメイの最良のテロワール + ピノノワールの最良のテロワール
をブレンドするというものです。

そして2013年ヴィンテージは、オート・コート・ド・ニュイ30%
ボジョレーのクリュ70%にしました。

「これってブルゴーニュのパストゥグランと同じじゃないか?」
と思われる方がいらっしゃるのではないかと思いますが、
パストゥグランとは全く異なります。

というのも、パストゥグランのガメイは
ブルゴーニュのテロワールで育てられたものだからです。

ブルゴーニュは石灰質や粘土質が多くリッチな土壌です。
それとは反対に、
ボジョレーは花崗岩が主体でとても痩せている土壌です。

痩せた花崗岩土壌こそ、ガメイが最もポテンシャルを発揮するのです。

Les Deux Terresは、エレガントで繊細、早くから飲めるワインを目指しています。
そして、私のワインを飲む最初の1本として、よい入門ワインだと思います。
こういったワインを15年前から作りたいと考えていました。

Les Deux Terresには大変自信を持っています。
入門編といいましたが、グランクリュと同じように
しっかりと樽も使っておりますし、同じぐらい手をかけて作っています。

次に、4つのムーラン・ナ・ヴァンをご説明致します。

Moulin-à-Vent Les Rouchaux 2012

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まず最初にLes Rouchauxというキュヴェですが、
こちらは標高の低いところにあります。

P1190787(写真の手前の区画)
アペラシオンには様々な標高の違いがありますが、
標高の低いところは、より土壌が深くなります。

このLes Rouchauxの畑は、1.5mから2mぐらいです。

そうは言っても、
コート・ド・ニュイでは8mから10mの深さがありますので
それと比較すれば浅いですが、
このLes Rouchauxの畑は花崗岩と砂状の質、
そしてシルトの質も土壌に交じっておりますし、
ボジョレーのクリュで考えますと大変素晴らしい土壌です。

(北部に5kmほど上がったプイィフィッセ、ヴァンゼルあたりから、
石灰質と粘土の渋い土壌、南部へ20kmほど下っても石灰質土壌)

Les Rouchauxをつくるときに最初に思ったのは
ボジョレーのマセレーション・カルボニックでは作りたくないということでした。

カルボニックの作り方は、全房を1か月間ぐらいタンクに入れ
ピジャージュやルモンタージュも行わず、そのまま発酵を促し、
6か月間の熟成の後、すぐに瓶詰されます。

ムーラン・ナ・ヴァンのテロワールはそういった簡単なやり方よりも、
もうちょっと繊細なブルゴーニュのやり方が合うだろうと思いました。

Les Rouchauxは100%除梗しています。
そして、3か月の醸造期間中、毎日ルモンタージュをします。
全部でピジャージュは3回~4回です。

深みという部分に関しては、このあと紹介する3種類と比較すると
少ないかもしれませんが、
エレガントで若いうちから楽しめる造りにしています。

Moulin-à-Vent Les Vieilles Vignes 2012

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2つ目のワインはLes Vieilles Vignesです。

こちらの畑はムーラン・ナ・ヴァンを帯状に上がっている畑で、
8区画・7ヘクタールを所有し、
私のドメーヌの中では一番生産量が多いものになります。

土壌はより浅く、2種類の花崗岩で構成されており、
ひとつは、色が白くクウォーツ(石英)が多く含まれ、
もうひとつは、酸化鉄が多く含まれています。

ピンクの花崗岩が劣化し、砂状に変化したものが50~60cm表層にあり、
その下が岩盤土壌になっています。

味わいはより明確で、冷たさやフレッシュな特徴を感じると思います。
土壌は浅くなればなるほど余韻の長さが長くなりますので、
明確で濃密な味わいだと言えます。

2012年より20%全房発酵を行っています。
全房発酵を行うことで、フレッシュさと少し塩味を感じる特徴を与えています。

伝統的にムーラン・ナ・ヴァン、ボジョレーでは全房発酵ですが、
私のドメーヌでは、ニュイ・サン・ジョルジュの方が全房発酵比率は高く、
ムーラン・ナ・ヴァンは控え目にしています。

Moulin-à-Vent La Roche 2012

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次にご紹介するムーラン・ナ・ヴァンはLa Rocheというワインで、
リューディがついた2つ目のワインです。

こちらの土壌は20~30cmと大変浅く、ピンクの花崗岩、ピンクの砂の土壌です。

ムーラン・ナ・ヴァン=フランス語で「風車」を意味する名前の通り、
粉を引くために作られた15世紀頃の風車があり、強い風が吹く場所に畑があります。

P1190784
風はブドウから細菌類や湿気を払い、土壌を乾燥させるといった
非常に良い役目を果たすので、健全なブドウを収穫することができます。

La Rocheを飲んでいただくとわかると思いますが、
よりミネラリーで引き締まった、真っすぐな味わいを感じて頂けると思います。

味わいは喉の奥のほうで感じるような特徴があり、
長期熟成にも向いたワインです。

私は最近、古いムーラン・ナ・ヴァンのワインをプロと一緒に飲みました。
1934年、47年、54年、59年の古いヴィンテージをブラインドで飲んだのですが
皆一様に、エシェゾーやグランエシェゾー、ミジュニーと勘違いをしていました。

これからも分かるように、ムーラン・ナ・ヴァンのワインというのは
2年のうちに飲み切ってしまうのではなくて、
10年以上熟成できるポテンシャルがあるということがお分かり頂けると思います。

特に次のワインはそういうことが言えます。

Moulin-à-Vent les Vignes Centenaires 2012

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こちらのles Vignes Centenairesというワインは
140年ぐらい前のプレ・フィロキセラのブドウで造られた、
大変特別なワインです。

ファーストヴィンテージは2011年です。

こちらの畑は80歳の栽培家が所有していたのですが、
彼が持っている畑の資料の中で
なかなか見せたがらないものがありました。

彼は、その畑を古過ぎて価値の無いものだと思っていたようです。

しかし私がどうしても見たいと彼に言い、案内して貰いました。

P1190804
目の前にはゴブレ仕立ての古木畑が広がっていました。

葡萄木は、選定の目の数で樹齢がだいたい分かります。
私は、110ほど数えたところでもう数えるのを辞めました。
つまり、樹齢110年以上の古木だということです。

所有していた80歳の栽培家に樹齢を尋ねても、
彼が若いとき、既に樹齢50年以上だったとしか分からなかったため、
役所に出向き、この畑が何年に植樹されたのかを調べました。

1870年から1882年に植樹された畑であることが分かりました。

そして、どれぐらい根が深く張っているのか見ようと根元を掘りました。
すると、接ぎ木の痕跡がまるでなかったのです。
それで、フィロキセラに侵されていない自根であると確信しました。

私はこのプレ・フィロキセラの特別な区画は、
19世紀の木の発酵槽を使い、丁寧な造り方でリリースしようと決めました。

les Vignes Centenairesは50%全房発酵、
50%除梗(除梗は手作業)で行っています。

醸造前に優しく破砕し、醸造中盤でも優しく破砕します。
過度なルモンタージュを避けて1.5ヶ月待ち、
18ヶ月間樽熟成(30%新樽)しています。
とても優しいワインの造り方をしています。

(続く)

ティボー・リジェ・ベレール 来日セミナーレポート その3

 

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